根拠はないが人気の子育て論『0~3歳の これで安心 子育てハッピーアドバイス』感想【0歳~3歳】

育児書レビュー

おそらく育児の入門書の中で最も有名なシリーズ。マンガやイラストを豊富に盛り込み、本が苦手でもさっくりと読めるようになっています。十分に勉強する機会を持たず親になった読者を想定しているのか、一部の漢字にはルビがふってあります。支援センターに置いてあるのを見たことがある人も多いでしょう。

3歳までは自己肯定感を育てる時期とし、どのように自己肯定感を育てるか解説しています。

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なんの根拠もない「甘えた子が自立するという説」

一言でいえば、「しっかり甘えた子がしっかり自立する」ということらしいです。しかし、甘えた子が自立するという証拠はありません。また、家庭で自己肯定感の低い子供が、学校でもそうなってしまうような描写がありますが、これも科学的な証拠はありません。

こういう本を読むと、家庭の育児が子供の性格形成に影響を及ぼすような気がしますが、行動遺伝学で明らかにされているように、実際はほとんど影響がありません。

著者も自己肯定感は普通に育児をしていれば育まれていると書いていますので、普通に育児ができている方にとっては読む必要はないと言えます。

2歳まではルールを守れない⁉

著者は自己肯定感を土台に、3歳~6歳で「しつけ」「生活習慣」が身につくとし、少なくても2歳まではルールを守ることも、ルールを理解することもできないといいます。そのため本書では、3歳までのどのようにしたら3歳以降にしっかりとした生活習慣がつくのかということについては全く言及がありません。

実際には赤ちゃんは、1歳くらいから家庭のルールを覚える(マネする)ようになり、2歳ではだいぶ生活習慣がついてきます。

例えば我が家の場合は、「ゴミはゴミ箱に捨てる」「靴は玄関で脱ぐ」「服を脱いだら洗濯籠に入れる」などは教えたことはないのですが自然にやるようになりました(やらない時も多々あります)。赤ちゃんだからルールなんて理解できないと思うのは間違いです。

また、ルールには大きなメリットがあります。我が家では、歯磨きの時に座るよう伝え、立ったら歯ブラシを取り上げ「座ったら遊んでいいよ」と言い、座ったら歯ブラシを渡すということを数回繰り返しました。すると、歯磨きの時は自ら座るようになりました。この過程で特にぐずることはありませんでした。(しかし側にいないと立ってしまうのですが)

ルールのメリットは、ルールの範囲で赤ちゃんが自由に行動できることです。歯ブラシをくわえたまま歩き回ったら危ないので、そういう場合は、歯ブラシで遊ばせることはできません。ちゃんと座ってくれるなら、思う存分遊ばせてあげられます。そうすれば、「歯ブラシで遊びたいのに!」という癇癪は起こりません。そういう関わりを通じて、自然と家庭でのルールを身につけていきます。

著者は、ルールを守ることより自分の気持ちを表現することが大事といいますが、自分の気持ちを表現することと、ルールを身につけることは、実は表裏一体なのです。

つまり、歯ブラシで遊びたい!という気持ちがあるから、座ったらOKというルールができるのです。親が勝手にルールを課すわけではなく、親子で家庭のルールをともに作っていくのです。

著者が2歳まではルールを守れない、と言う背景はなんとなく理解できる気がします。小さいうちにしつけをしたり、生活習慣を身につけさせようとすると、厳しくしすぎる恐れがあるからです。

生活習慣を身につけさせながら赤ちゃんの好奇心を育み、自己肯定感を高めることは可能ですが、そのようなことを書いて育児の難易度をあげるよりも、より重要な自己肯定感のみを取り上げたほうがシンプルで間違いないだろうという思いがあるのではないでしょうか。

ただし、冒頭でいったように、親に子供の自己肯定感を育む影響力はありませんが。

奴隷って…

最も残念なのが著者の「赤ちゃんは、親を奴隷化する」という考えです。

例えば、「介護が必要な高齢者は家族を奴隷化する」と言ったら、反発を覚える人が多いのではないでしょうか。それは、介護が必要な人も、支える家族も、それぞれが意思を持つ対等な人間だからではないでしょうか。

私は子供と接していて奴隷だと思ったことは一度もありません。赤ちゃんだって、親を奴隷化しているなんて言われたらいやな気持になるでしょう。奴隷なんて、赤ちゃんにも失礼です。

生まれたての赤ちゃんはものすごく手がかかるし、一人ではほとんどなにもできないのでやってあげることが多い、ということを言いたいのでしょうけど不適切な表現ですね。

ちなみに本書には、親の自己肯定感向上のアドバイスも書かれています。しかし、親が奴隷だという認識こそが、親の自己肯定感を下げるのではないかと思います。さらには、子供との関係も悪化する原因になります。なぜならよい関係は対等な人間関係の上に築かれるからです。

著者は親の自己肯定感を上げたいのか、下げたいのか……。

キレてもOK!?

親がキレることに対しては、子供に関わっている証拠だとして、「そういう意味では、キレるのもOK」と書かれてますが、真に受けてキレちゃだめですよ。これは、過去にキレて罪悪感がある人のためにカウンセリング的に書いているだけで、そういう方も今後はキレないようにしましょう。

子供が脳をすくすくと発達させるためには安心感が重要という説がありますし、そうでなくても、よい親子関係を築きたいならキレるのはNGです。何かを言う時には落ち着いて言いましょう。落ち着けないならその場を離れるなり、冷静になる時間をとりましょう。

体罰については、体罰を用いて育てられると、特に言葉や社会性の発達にはっきりとした遅れが生じたというアメリカの研究結果を紹介しています。

本書で参考になったところ

「ひといちばい敏感な子(HSC)」というのは初めて聞きました。そういう性格があるそうです。よく泣く赤ちゃんは、敏感な子なのかもしれません。

最後に、この書籍の良いところはパパにやってほしいことや、専業主婦の大変さが描かれている点です。主に数ページの漫画で描かれているだけですが、専業主婦だけでなく、育児休業中だったり、育児をメインで担うワーキングママの苦労が分からない人に見せれば、少しは伝わるのではないかなと思います。

著者:明橋大二
発行日:2017年7月1日
対象年齢:0歳~3歳
おすすめ度:★★☆☆☆
面白い度:★☆☆☆☆
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