知育に熱心な脳科学者は4ヵ月から保育園に預けた!『パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学』の感想【0歳~3歳】

育児書レビュー

この本の最大の見どころは、脳科学者である著者が、脳の発達によいことを考える中で、娘さんを生後4ヵ月で保育園に預けたことです。

0歳からの保育園が発達にいいのか、直接的な調査はありませんが、いろいろな調査や事例をもとに、そのような結論になったのだと思います。

私も、保育園は知育に最高の環境だと思っているので、著者の選択が頼もしく感じました。(参考⇒‟逆”3歳児神話!?とりあえず3歳まで保育園に預けようという発想

その他は、あまり参考にできることはありませんでした。脳科学の見地から子育てのコツが書かれていると期待していたのですが、この書籍はエッセイなので、子育てノウハウを期待する方にはおすすめできません。

著者は脳研究者といえでも乳幼児を研究対象としているわけではないので、子供の脳がどのように物事を認知するのかという点は教科書的に解説していますが、どのように子育てをしたらいいかを解説するわけではありません。

よくよくタイトルを見てみると、メインタイトルが「パパは脳研究者」とあります。育児書の雰囲気はありません。エッセイなわけです。

サブタイトルの「子どもを育てる脳科学」はちょっと言いすぎではないかと思います。「子供の『育ち』を脳科学的に解説」なら、本書の内容を反映しているいと思います。

研究の裏付けがあるわけではありませんが、著者が脳科学を研究してきた経験に基づいて、どのような育児がいいのか考え実践している様子は書かれています。
ただ、我が家には合わないなと思うことが多かったです。

私は著者のことを知らなかったのでインターネットを徘徊し、著者のインタビューにたどり着きました。そのインタビューでは、著者が自身の研究について語っていて、とても面白かったので、いつか著者の別の書籍を読もうと思っています。

当然ながら、本書も著者のファンであれば楽しく読めると思います!

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著者は専門家ではなかった

帯には、「専門家だから伝えられる『脳科学の育児術』」などとあるのですが、本書の中には脳科学的な子育てのコツはありませんし、著者は脳科学者かもしれませんが、子供の研究をしているわけではないので専門家とも違うのではないかと思います。

冒頭に、「脳研究者として、赤ちゃんの脳がどう成長していくかを調査した学術論文を多く読んできました」と書かれています。つまり、論文を読んだだけで、自身は研究してないということです。

脳科学者といえでも、子供の研究しているわけでなければ、子供の脳について語ることは困難なんだなということが本書を読んでよくわかりました。子供の脳は摩訶不思議なんですね。

また、子供が成長するうえで重要な要素である「友達との関係」に言及がないのも残念でした。子供集団は脳の発達に極めて重要なので、乳児期までなら分かりますが、4歳までというならば科学的に考えれば、ぜひ言及してほしかったです。

ファンならエッセイとして楽しめる

この書籍は月刊誌で書いていたお子さんの成長記を再編集したものだそうです。これをエッセイと思って読めば、過度な期待はしないと思いますし、この著者のファンなら面白いのではないでしょうか。

共感できなかった…

この方の娘さんは、いろいろできるようになったのが早かったようで、月刊誌で連載中にもそのような声が多くあったのでしょう。「本書は成長記録という性質上、どうしても早い部分だけに焦点が絞られます」と書かれていているのでとてもびっくりしました。

なぜ成長記録だと、早い部分に焦点が絞られるのでしょうか?例えば1歳半を過ぎて歩いた場合、少しのんびりだと思いますが、歩くという大きな進歩に注目しない親はいないのではないでしょうか。

早い部分に注目してしまうのなら、子育てを誰かとの比較でしているとしか思えません。それが成長記録の性質なのでしょうか……?違いますよね!

おそらく著者の意図も別のところにありそうです。実際のところは、「子供が早くいろいろできることを自慢している」というような批判が気になるのではないでしょうか。著者は人目を気にするなぁ、と読んでいてたびたび感じました。言い換えると、他の人の心情を考える優しい方なんでしょうね!

子供のちょっとした成長の差が気になる親はたくさんいます。就職の面接でお座りやたっちのできた月齢を聞かれることはないし、早くできても遅くても獲得する能力に差があるわけではないのに、なぜか早いと嬉しくなるという。

そして、ネットでは、早い成長を記す親に対して、自慢だとして叩くような風潮もあります。著者はネットで叩かれるようなことが嫌なようで、子供の写真付の残暑見舞いを出したという記載にもわざわざ次の注釈をつけています。

「私は、『子供の写真に対して画一的に不寛容になるのは好ましくない』と、子供を授かる前から一貫して主張しています。世間の多様性を根拠に写真ハガキを否定するのなら、写真ハガキもまた表現の多様性の1つのはずです」

著者はいったいだれに対して一貫して主張していたんでしょうか?(笑)

世の中には子供の写真の年賀状などを迷惑だと感じる方もいるようで、そのような意見はネットで見たことがあります。

しかし、現実社会でそのような人にあったことはないですし、一般の人はそもそもそういう意見があることすら知らないでしょう。小さい子供のいる方からは、写真付きの年賀状を受け取ることが多いです。

まれにそういう年賀状が嫌いな人がいたとしても、面と向かって言う人はいないでしょうから、著者はネットの掲示板などをよく見ていて気にかけているかな…?

著者は子供ができる前は、写真付きの年賀状は嬉しいけれど、どう考えても親バカ丸出しだと思っていたそうです。

私は「親バカ丸出し」なんて思ったこともなかったのでまたまた驚きました。
お子さんができる前は写真付きの挨拶状にそのような批判的な気持ちが(わずかでしょうけれど)あったのに、いざ子供ができたら自分も送ってしまったので、言い訳をしたい気持ちになったのでしょうか。

今やパソコンやプリンターが普及して、複数のあて先に同じ年賀状を送ることが一般的になりました。写真館できれいな年賀状をプリントしてくれるサービスもあります。通常そういうサービスでは、同じデータで何枚も発注することになります。ですが、もともとは新年の個人的な挨拶なので、そもそも著者のいうような「表現」の場ではないのです。

誰かが快くないと言っても、この著者はその相手に送り続けるのでしょうか。
そんなことしないですよね。年賀状は私信なのだから、相手の気持ちを考えて送るものではないでしょうか。ただ、相手がどう思っているのか分からないでの、相手の心を想像するほかありません。通常は、親しい人の家族の写真は嬉しいものと思って送るのだと思います。

著者もかわいい子供の写真付きの挨拶状を送りたいだけなんでしょうから、多様性とか理屈をこねないで、「かわいい子供をみんなに見てほしい!」「送り先の知人はきっと喜んでくれるはず!」「子供の写真は挨拶状にふさわしいと思う」などと素直に言えばいいのになーと思ってしまいました。

ちなみに私は子供の写真付きの挨拶状を送ったことも、今後送る予定もありません。手間かコスト、もしくは両方がかかるので……。毎年送ってくれる友人はすごいなと思っていますし、いつも楽しみにしています。

一方で、望んでも授からず、子供の写真を見るのがつらい方もいると思いますが、送らないようお願いするのが気が引けるようなら、写真をなるべく見ないようにしてさっくりシュレッダーにかけるといいと思います。

もしくは、パートナーが気にしない人であれば、目に入る前に破棄してもらいましょう。脳が不快と感じるものを努力で快にかえることはできません。子供の写真に不寛容はよくないとする著者の主張は理解しかねます。不寛容でいいじゃないですか!!自分のありのままの気持ちを大切にしましょう。

笑いのツボが違っていた

クーイング(赤ちゃんの発する「あー」などのかわいい声)に返事をすることがコミュニケーションの発達上大事で、返事を返すようにしているという話から、

「そう意識しなくても、自然に返してしまうものですが(笑)」

どのあたりが(笑)なのか!?
(笑)の要素が分かりません……(笑)。

なんとなくわかるけど(笑)ってつけるほどでもないのでは、というのも多いかったです。能動的な行動が人間を成長させるのでお子さんには割としたい放題にさせているけれど、犬の飲み水の水をすくって飲み始めたので、「さすがに止めました(笑)」とか。犬の水くらいいいんじゃないでしょうか。

私は犬を飼ったことがないので分からないのですが、犬の飲み水は笑っちゃうくらい危険なのでしょうか?いや、それなら笑ってられないですよね。

我が家ではお風呂のお湯を飲んでましたけど、同じレベルのような気がします。そんなに危険なら、むしろ手の届かないところに置いてあげればいいのに……なんて思ってしまいました。

次は(笑)ではないのですが笑い関連で一番びっくりしたエピソードです。
著者はお子さんの顔や頭を強く洗うので、お子さんは奥さんとお風呂に入りたがるそうです。

2歳7か月の時、お子さんは顔を洗う前に「お姉ちゃんだから、泣かないよ」と著者に宣言したのですが、著者はいじわるをして、いつもより強く洗ったそうで、結局泣いてしまいました。するとお子さんは「泣いちゃったから、もう1回洗って」と。

すると著者は、

「思わず爆笑」

……だそうです。

え~~~!爆笑するポイントってどこなんでしょう……。私は日々の健康や清潔を保つための行為は気持ちよくさせてあげたいと思っているので、ゴシゴシ洗うのも、爆笑するのも理解ができませんでした。

著者はユニークです!

イクメンアピール!?

イクメンになると公言したり、おむつ替えは妻にやらせないという著者の姿勢はどうなんだろうと思いました。

一方で素敵だなと思ったのは、ノンスタイル石田さんのBuzzFeedのインタビュー記事です。

インタビューの中で石田さんは、離乳食も「やらせてもらった」とか、自分のことはイクメンと思っておらず自分は子供のストーカーでチャンスがあれば一緒にいたい、などと言っています。

おむつ替えを妻に「やらせない」という著者にたいして、「やらせてもらっている」という石田さん(しかも双子!!!)

著者が全でのおむつ替えをしているならまだ分かりますけど、「私が家にいる間」はやらせない、なんですよね。では、著者が不在の時は奥さんに「やらせている」のかと?

違いますよね!ふたりともきっと素敵なパパで、心持ちは同じだと思うのですが、言葉の選び方はやはり芸人さんだからか、石田さんは絶妙で心にすっと入ってきます。

石田さんのエッセイなら面白そうだなと思いました。そのうち書くかもしれませんね。

紹介されている論文が実用的でない

いくつかの論文をピックアップし、知識がちりばめられています。

例えば、生まれたばかりの赤ちゃんは口やあごなどでも味を感じる能力がある、など。

紹介されている論文でも、育児に関連する情報は知っているものばかりだったのですが、こういうトリビア的な知識は他の書籍で読んだことがなかったので、ふーんと思いました。

でも、育児にいかせるかというと……。

子育ての苦労が伝わってこない!

言葉は脳をコントロールするので、著者はあえてネガティブなことは書かないようにしているのかなと思います。育児の様子もどことなく「壁に止まったハエの視点」で書かれているように、客観的です。

だからなのか本書からは子育ての喜びや楽しさも伝わってこないんですよね。子育ては楽しく、子育てに参加しない男性は損をしていると著者は言うのですが、なぜか心に響きません。

子育てが楽しいというのは、子供がいなくても想像できることですが、子供を産むと、育てることの想像を絶する大変さにたいていの親は驚きます。その大変さを率直に語ったうえで、でも育児は楽しい、と言わないとなかなか響かないんじゃないかな、と。

(『マシュマロ・テスト 成功する子・しない子』には、壁に止まったハエの視点で体験を視覚化するとストレスが減るとあります。)

あえての保育園通いには共感

0歳4ヵ月で週3回保育園に通わせることにしたそうです。この理由について、「早期の園通いがよいことかは正直なところわかりませんが、親やの独善的な価値観だけでなく、いろんな人の価値観に触れさせ、『我が家だけが世界の全てではない』と伝えたいと考えたから」だそうです。

他の世界を見せたいなら、支援センターに行ったり、親子で参加できる育児サークルや習い事もいろいろあるのに、あえての保育園にびっくりしました。

ただ、早期に保育園に預けたり、2歳からDVDを見せたり、2歳6か月でひとり寝させたりといった賛否両論ありそうなことを、著者は自然にやっているので、本当はしたくないけどそういうことをしている方にとっては、心強く感じるのではないでしょうか。

だって、知育に熱心な脳研究者がやっているんですよ!

また、11ヵ月の欄に、寝つきのいい奥さんはお子さんが泣いても起きないので、著者がミルクをつくると書いてあります。寝つきがいいとありますが、出産後には母乳が順調とも書いてあるので、少なくても産後しばらくは夜中に起きて頻回授乳したのではないでしょうか。

11ヵ月で離乳食が軌道に乗っていれば、夜間授乳が必要なくても不思議ではありません。赤ちゃんは寝言泣きといわれるように、寝ているのに泣き声が出てしまうことがあります。また、睡眠と睡眠の間のつなぎがうまくできず一瞬起きて泣いてしまうこともあります。しばらく様子をみたら、再度すっと眠ることもあります。もしくは、ミルクなどをあげずに抱っこなどで眠ることもあります。

お腹がすいていないのに、夜間にミルクをあげると消化器官の負担になるし、安眠を妨害するでしょう。奥さんが起きないのは、起きる必要がないからではないかという気が……(笑)。

ちなみに新生児の赤ちゃんが泣いていても起きないお母さんは実際に知っています。産後に入院中、爆睡していたところ、助産師さんに「赤ちゃん、泣いてるよ!」と起こされたという人がいました。

「導く」という言葉には違和感を感じる

著者は、「3歳までに親がどんな子どもに育てたいかをしっかり考えて、働きかけることの意味が大きい」と言います。その言葉通り、著者はかなり教育熱心です。一方、『子育ての大誤解』では、科学的に検証した結果、親が子供の性格におよぼす影響はほとんどないとしています。

私は『子育ての大誤解』に賛成で、親は子供の個性に大きな影響を与えることはできないと思います。親が何をしても、子供は子供の人生を生きていくでしょうし、それこそが素晴らしいことだと思います。

著者は子供が興味を持つように優しく導くと言いますが、私は、子供が興味を持ったことをさらに深められるようにサポートすることは重要だと思いますが、子供が何に興味をもつかは自主性を尊重したいと思っています。というか、親が子供を導くなんて無理!

お子さんのタイミングを待たない

著者はひらがなは早くから覚えておいてよいという考えです。

お子さんが興味が無い時に教えようとして失敗するも、その一か月後に自ら興味をもったそうで、あらかじめ文字に触れさせたのは意味があったとポジティブに解釈しています。

ですが、子供は親が喜ぶことを敏感に感じ取ってやろうとする子もいるので、私は自然に興味を持つのを待つのがいいと思います。

著者がひらがなを早くに覚えたほうがいいという理由は、アウトプットを増やしたいからです。絵本も読んであげるより、子供に読んでもらったり、一緒に読むのがいいという研究結果があります(本書以外でも育児本でよく紹介されています)。

おそらく文字を読める必要はなく、暗記していたり、絵から感じ取ったことを自由に言葉にすればいいのだと思います。文字を読むと絵が頭に入ってこないので、せっかくの絵本を十分に楽しめないと個人的には思います。

子供を試す

お子さんをしばしば試すようなことをするのも共感できませんでした。ネコのぬいぐるみを指して「クマだよね?」と言って反応を確認したり、Cを指して「Oだよね?」と言ったり。

2歳10ヵ月の頃、お子さんは著者や奥さんが嘘をついているか確認するようになったそうです。そのことに対して著者は、子供自身が嘘をつくように、他人も嘘をつくと推測したからこその高度な技、と言っているのですが、それまでの関わりで嘘と思われるようなことを言ってきたからという可能性の方が高いのではないかという気がしました。

私は子供とは信頼に基づいたよい関係を築きたいと思っています。なので、子供だから試していいという考えにはあまり共感できませんでした。

しつけについて

著者はドアを閉めたり、おもちゃを片付けたりというのは脳にとって不自然な行為で自発的には成立せず、しつけが必要だと言います。たぶん子供とあまり接していないからそう思うのかなと思うのですが、人間は模倣が得意で、特に乳幼児は模倣の達人なので、教えこまなくてもマネします。声をかけなくても、楽しそうな様子を見せなくてもマネします。マネをしなければ、興味がないのだからほっておけばいいと思います。

子育ての大誤解』には、文字の無い社会では、生きていくための知恵のほとんどは模倣を通じて学習される、としています。脳にとって不自然な行為というからには臨界期がないので、いつでも学べます。

「ほめる」と「しかる」については、著者の研究もまじえて解説してあり参考になりました。ネズミに迷路を覚えさせる時には、ほめる(できたらエサ)だけが最も効果的だそうです。ほめる+しかる(電気ショック)やしかるだけよりも学習効果があるそうです。しかるとやる気がしぼんでしまうとのこと。

ちなみに、『マインドセット 「やればできる!」の研究』のドゥエック氏の研究によると、ネガティブでも建設的なフィードバックであれば、ほめるだけよりよい結果になることがあるようです(ドゥエック氏の研究を紹介している『GRIT』から)。

また、若いころに電気ショックを自力で止める経験をしたマウスは、大人になってからストレスに強くなるという有名な実験結果もあります(『オプティミストはなぜ成功するか』)。

本書ではなぜか書かれていないのですが、プロセス(努力)をほめるのがいいとよくいわれています。本書ではむしろ、「努力が実ったね」はよくない褒め方だとしています。しかし、『マインドセット 「やればできる!」の研究』では、才能を褒めた場合との比較ですが、努力をほめると難しい問題に挑戦する傾向があり、知能も向上するとしています。

苦手なものを重視するのは、一般向けと思えない(著者はユニークで才能があるからそれでいいけれど)

著者は得意なことは放っておいてもそこそこ伸びるので、さりげなくサポートすればよく、むしろ苦手なことに手間をかけて裾野を広げることが重要といいます。一般的には、好きなことをのばそう、という意見が大半なので、驚きました。

これは、おそらく著者の経験から言っているのだと思います。著者は自身に読字障害の傾向があり、読むことが困難だったそうです。そんな困難を克服して研究者になったわけですから、挫折や困難に立ち向かう根性や、目的を達成する強い意志と粘り強さを生まれながらに持っている方だと思います。

おそらくお子さんもそうです。そんな親子であればこそ、「得意なことは放っておいてもそこそこ伸びる」のです。

一般的には好きなことに取り組み、目標をもつようになれば、我慢や忍耐、意思の力が試されます。好きなことですら向上を目指して努力を続けることは大変なので、好きなことを通じて、忍耐や意志の強さを身につけるのが一般的と思います。

また、著者は「生まれ持った才能を素直に伸ばして、一流のスポーツ選手や芸術家になるのは一握り」とし、1つの才能が突出しているよりも幅広く能力を伸ばしてあげるほうがよいという考えです。

しかし、努力をするのは、一流になるためではなく、努力そのものに価値があるからだと私は思います。才能の有無も関係ありません。好きなことを必死に頑張れる人なら、その他のことでもがんばれるからです。そして、がんばることが子供自身の楽しさや喜びにつながるからです。

著者独自のマシュマロ・テストが非科学的!

4歳になる娘さんにマシュマロ・テストをしたエピソードで本書は締めくくられます。

マシュマロ・テストとは、お菓子を食べるのを我慢して待てたら、もう1つあげるけれど、すぐに食べちゃったら1個しかもらなえない、という状況で子供がどうするか観察するものです。

娘さんの結果を書く前に、マシュマロ・テストで合格できる子は30%で、追跡調査により、その子たちは大人になっても好ましい人生を送る傾向があることが知られていると書いています。

そして、別室に行き、娘さんの好物のゼリーを二つの器にとり、ひとつを手渡し別室へ行き……。

この次の展開として、私はこのテストについての解説が書かれるのだろうと思いました。まず、マシュマロ・テストはそれぞれの子供の将来の判断材料にはならず、ある母集団の傾向を予想できるにすぎないということが書かれるはずだろうと。

また、著者の方法は、マシュマロ・テストとは条件があまりに違うので、実際のマシュマロ・テストの追跡調査の結果を参考にすることはでないということ。

最大の違いは、実際のテストは家ではやらなかったこと、お菓子をあげたり、説明したのは研究者だったこと。それが、「家で」「父親」が、となった時点で全く別物の実験になります。

子供は(大人もそうですが)家の仲と外で行動が異なり、家の外の行動の方が社会的な性格を反映しているので、本来は子供が所属している社会でやるべきです(本家の実験では保育園で実施)。

さらに、実際のマシュマロ・テストでは、何も机と椅子意外にない部屋でやります。著者の場合、実施した部屋におもちゃや文具は無いといいますが、その他には何かあるでしょうし、自宅ならリラックスできるので、お菓子から気をそらすのも容易でしょう。

さらに、マシュマロ・テストで待つには、相手への信頼を持てるかが重要で、父親であれば(通常は)有利になると予想されるのではないでしょうか。

ちなみに、女子の方が待てる時間が高いので、女の子で、かつ、著者と同じ条件でやれば「成功」する可能性は高くなるかもしれません。

一方で、個々人の忍耐の強さは状況によって変化するので、家庭でやった方が不利とも考えられます。たいていの場合は、外よりも家庭内の方が忍耐力が低くなるからです。友人に嫌な顔をするのは我慢できても、同じことを家族にされたら感情が出てしまうというのは大人でもよくあると思います。

家でマシュマロ・テストをしたけれど、待てなかった方は、気にすることはありません。家でやっても無意味だからです。家で忍耐強くても社会に出て自制心がないということもありえます。重要なのは、家庭の外の社会でどうふるまうか、です。(ちなみに、著者の娘さんなら、おそらく厳密なマシュマロ・テストの環境でも待てたと思いますよ……。)

私は解説を待ちました。

しかし……!
著者はこう綴って筆をおきます……、

娘は食べなかった。「お父さん、ホロリ」

え?

え~~~!!??

えええ~~~!!!!

突然の感動のフィナーレに唖然としました。

著者は研究者なので、条件が異なる実験の結果を参考にできないことは分かっているのに、なぜなのでしょうか。

きっと、「エッセイ」だから……ということに尽きるのでしょう。ならば科学とタイトル付けるのはどうなのか。

ちなみに、著者は「忍耐力を導く」ことに気を使ったといいますが、子育て習慣と学校での自制心との間の相関関係はあっても極めて小さいようです(『子育ての大誤解』)。自制心は主に集団生活の中で養われるので、親が影響を及ぼすのは困難です。

それでも自制心を育みたい!知恵を授けたい!という方は、学術的で文字も小さいのですが、本家の『マシュマロ・テスト 成功する子・しない子』をおすすめします。

タイトル:パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学
著者:池谷裕二
発行日:2017年8月18日
対象年齢:0歳~3歳
おすすめ度:★★☆☆☆
面白い度:★☆☆☆☆
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