日本版GRIT?『子どもの脳がぐんぐん育つ 「やる気脳」を育てる』感想【0歳~7歳】

著者の澤口 俊之さんは前頭前野を専門とする脳科学者。テレビでも活躍されているのでご存知の方も多いのでは。

私も深夜のテレビ番組に初出演した時に視聴していましたが、司会の明石家さんまさんが、「も一度、番組に出てほしい!」と懇願するほどのインパクトの強いキャラクターが印象的でした。

澤口さんが脳研究者ということは知っていたのですが、出産してから何冊か著作を読んで、幼児教育を主テーマとして研究していることを知りました。著者が専門とする前頭前野が大きく発達する時期が8歳までなので、自然とそうなったのでしょう。

著者の書籍では、よくあるマウスの実験のようなものはあまりとりあげられず、人を対象とした研究が多いようです。それは、人間の前頭前野が大きく発達したことで、他の動物と比較にならないほど高度な機能を持っているからでしょう。

本書より前に同じく幼児教育を扱った『「学力」と「社会力」を伸ばす脳教育』を出していますが、やや専門的なため、子育て中でも気軽に読めるように著者の体験談を織り交ぜながらエッセイ風にまとめたのが本書だそうです。

『「学力」と「社会力」を伸ばす脳教育』も読みましたが、確かに気軽に読める感じではありませんでした。本書は、文字も大きく、さらっと短時間で読めます。

「優秀で、個性的で、かつ独創的」……、そんな子供に育てるための育脳方法を解説しています。

頭がいい子=IQが高いという連想をしがちですが、日本のIQは言語や空間認知など、個別の知能を測っているに過ぎないそうです。個別の知能はスポーツでいうところの選手のようなもので、それぞれの選手が優れていても監督がしっかりしていないと結果が出せません。

一方、欧米のIQは「一般知能gF」と呼ばれ、さまざまな知能をまとめる上位の知能だそうです。一般知能gFが低いと仕事が続かない、早々に離婚する、貧しい生活を送る可能性が高く、逆に一般知能が高いと社会的に成功し、幸せな家庭を築ける可能性が高いとしています。(ちなみに一般知能gFは、遺伝による影響を70~80%程度受けるそうです。)

一般知能gFを高めるために、前頭前野の総合的な知能(著者は「HQ」と呼ぶ)を育成することを推奨しています。

前頭前野内のシナプス数は、生後から4歳~6歳までは増え続け、8歳頃から減少し、12歳~15歳で大人のレベルに近づくそうです。前頭前野は20歳過ぎまで発達するので遅すぎることはないとしつつも、シナプス数が多く変化の大きい8歳頃までを非常に重要な時期としています。

8歳までの幼少期は、脳の伝達物質のドーパミンが最もよく活動する時期でもあるそうです。ドーパミンはやる気を増強する役割があります。目的を達成するとドーパミンが出ます。その結果やる気が増して、さらなる目的に向かい、達成するとまたドーパミンが出てやる気が増し……というのを繰り返すと、脳機能が向上していく「やる気回路」ができるとしています。

重要なのはこのようなサイクルで成功体験を積むことなので、目的は達成可能なものであるべきだそうです。

このサイクルを回す上で「やる気」「努力」「根性」が大切とあります。古めかしい響きですが、言っていることは『やり抜く力 GRIT』のアンジェラ・ダックワースと同じですね。「やる気」「努力」「根性」を「やり抜く力」とか「GRIT」と表現すると今風になります。

アンジェラ・ダックワースは物事を成し遂げるには「やり抜く力」が重要で、それは「情熱」と「粘り強さ」からなるといいます。「情熱」というのは熱心さではなく、「ひとつのことにじっくりと長い間取り組む姿勢」を指すとのこと。まさに「(継続的な)やる気」ですね。「粘り強さ」は、「努力」「根性」といえるでしょう。

本書では、どのように「やる気」「努力」「根性」を伸ばせるのかは書かれていません。『やり抜く力 GRIT』では、そのあたりの考察があるので(結論ではない)、参考になると思います。

また、子供の興味のあるものや得意なことを見極め、いいところを伸ばし、苦手なものは「置いておくか、多少よくしていく」ことを推奨しています。この考えの背景は、著者の『幼児教育と脳』を読むとよくわかります。

その他にも、一般知能gFやHQを高めるための方法が具体的に書かれてあり参考になりました。著者の幼児教育関連の書籍を手軽に1冊読みたいのであれば、本書がおすすめです。

本書は、著者の『「学力」と「社会力」を伸ばす脳教育』『発達障害の改善と予防』『幼児教育と脳』に比べると読みやすい分、内容は割愛されています。本書を読んで、もっと詳しく知りたいと思った方は、『「学力」と「社会力」を伸ばす脳教育』を読むことをおすすめします。

子どもの脳がぐんぐん育つ 「やる気脳」を育てる(2012年)
著者:澤口俊之
発行日:2012年3月5日
対象年齢:0歳~7歳
おすすめ度:★★★★☆
面白い度:★★★★☆