子供に勉強をさせたい?
ゲームはやめさせたい?
どちらも同じテクニックが使えます。
まずは気を楽に
子供がゲームをすることに対して警戒したり、心配したり、不快に感じる親は多いです。
でも、ゲームが知能や学業に悪影響を与えるという科学的な根拠はなく、むしろゲームの種類によっては脳の発達にプラスになることもあります。
ちなみに、『発達障害の改善と予防』では、6歳未満では、どんなテレビゲームでも脳機能の発達に悪影響だとしています。
ここでは小学生がゲームを欲しがった場合にどうするか、また、すでにゲームを持っていて止めさせたい場合にどうすればいいのか書きます。
子供がゲームを欲しがったら
子供が小学生以上でゲームをものすごく欲しがり、経済的に許すのであれば、四の五の言わずに買ってあげましょう。簡単な会話をするとしたら、なぜ欲しいのか聞いてもいいでしょう。
子供は大人が思うほどゲームが好きではありません。女のなら特にそうです。おそらく友達が持っているから、というのが理由です。
子供社会にとって、仲間と同じであることはとても重要です。
大人からすると、「お友だちはお友だち、あなたはあなたでしょ」と思いますが、子供にとっては友達と同じであるという仲間意識はとても大切です。
子供は、自分たちと違うと思えば、バカにする、笑われる、仲間はずれにするなどの制裁を加えます。
一人だけゲームができない子供は、邪険にされたり、疎外感を味わったり、同じく友達がいない人気のない子としぶしぶ一緒にいるなどして、惨めな思いをするかもしれません。
特に仲間外れは、社会的な動物である人間にとって、最も厳しい罰です。
特に子供にとっては、自分の存在を全否定されることと同じです。
家族が子供の性格や自己肯定感に与える影響はほとんどないことが証明されています。一方で、仲間からの拒絶や、仲間内での地位の低さは性格として一生残る可能性があります。
子供の自己肯定感を高めたいのであれば、できる限りお友達と同じ環境を整えてあげましょう。
つまり、子供が友達と同じであることを求めてゲームを欲しがるなら、あっさり買いましょう。小学生時代は、お友達を同じであることを意識する過程で、社会に適応してきます。
(ちなみに、なんでもかんでもお友達と同じになるわけではなく、同じになるのは「行動」だけで、性格はむしろ差別化されます。個性をつぶすどころか、同じ行動を通して、個性が現れてきます。この(行動の)同化現象は、適切に社会に適応するために必要な過程です。中学生以降になると、子供たちは仲間と同じであることに対する執拗なこだわりがなくなるので、行動面でも個性が顕著に出るようになり、個性そのものもさらに強くなっていきます。)
もちろん、ゲームを取り上げた結果、ゲームをやる仲間から外れ、読書や勉強の好きな仲間の一員になり、成績が上がる可能性もあります。
しかし、一般的には、もともと気が合うから仲間になったわけで、そこで邪険にされたり、仲間はずれになるのは辛い経験になり、性格に影響をおよぼす可能性があります。
本当にゲームをやらせたくないなら、シュタイナー教育のようなゲームをする子がいない学校に行かせることをおすすめします。
子供にゲームを止めさせたい場合、決して「止めろ」と言わないこと
ゲームを止めて欲しいのであれば、「止めなさい」と言わないようにしましょう。時間で制限するのもやめましょう。
ゲームのせいで寝る時間が遅くなる場合は、睡眠に影響がでないように、帰宅したらすぐにゲームをやるように指示してください。
土日は朝からゲームをさせて、夜寝るころには子供が自らゲームを止めることができるようにしましょう。
大事なことは「ゲームをやって」と指示したり、「ちゃんと朝からゲームをして偉いね」と誉めることはあっても、決して「ゲームをするな」「ゲームを止めろ」と言わないことです。
人間は「やれ」と言われるとやりたくなくなる
人間は自分でやると決めたことを、やっているときにやりがいを感じます。
もしやりたいと思っていたことでも誰かにやれと言われると、やらされるような気持ちになりモチベーションが落ちます。
これは大人も同じです。
今日は外回りをがんばろうと思っているところに、上司が「今日はちゃんと外回りにいくのか?今日こそ行けよ」なんて言われた日には、それまでのやる気が一瞬で消え去り、どうサボろうか考えはじめてしまいます。
同じく勉強をしてほしいなら、決して「勉強しろ」と言ってはいけません。
まわりの反応で好き嫌いが変わる
何かを好きという気持ちは、自分の心の中から生まれ、そうそう変わるものではないように感じますが、実際には環境の影響をかなり受けます。
例えば、本が好きでも、嫌いな人に面白いよとすすめられた本を読みたくなくなったり、読んでもあら探しをして楽しめなかったりします。
好きでやっていることに対して誉められると、脳は「誉められるからやっている」と思い、誉められないとやらなくなってしまいます。
例えば、インターホンを鳴らすいたずらを楽しんでいる子供に対して、「インターホンを鳴らしてくれてありがとう」と言って、100円あげます。
子供は喜んで毎日やるようになります。
そして徐々に90円、80円、50円、10円…と金額をさげていくと、5円になったときに子供たちは来なくなりました。
5円じゃやっていられない!と思ったからです。
もともと楽しくてタダでやっていたのに、お金をもらえるようになると、お金(ご褒美)がもらえるからやるようになり、ご褒美に満足ができなくなると止めてしまいました。
同じように、子供が好きで絵をかいていても、あまりに両親が褒めるので、絵をかかなくなってしまうこともあります。
ご褒美をあげたグループとあげないグループを比較すると、あげないグループの方が活動を継続した、という実験結果もあります。
好きでやっていることに対しては誉めたり、ご褒美をあげる必要はありません。子供が自ら楽しそうに勉強していたら誉めずに見守りましょう。
誉められたくて勉強をがんばっている場合は、勉強は自分のためにするもの、楽しいからするものだと、伝えるといいと思います。子供が勉強しなくても、親は困らない、ということ態度を明確にすべきです。
そしていずれは自分の中でモチベーションを生み出せるように、動機付けの支援をしたり、勉強の楽しさを知るきっかけをつくってあげましょう。
ダメだと言われるとやりたくなり、優しく諭すと興味を失う
逆にダメだと言われていることをやる時、脳は「ダメだと言われてるのにやるということは、面白いことなんだ」と認識してもっとやりたくなります。
だから、ゲームをやめさせたければ、決して「ゲームをするな」と言ってはいけません。ゲームを止めさせなければいけない場合は、優しくさとして、自分から止めるまで辛抱強く待ちましょう。
ゲームをしている子供に、「止めなさい」と言ってやめさせたグループと、「そろそろ勉強をしたらどう?」と優しく諭したグループをつくり、ゲームを止めさせた後に、子供にゲームが面白かったか尋ねた実験があります。
すると、「止めなさい」というグループの子供は、「すごく面白かった」と答え、優しく諭したグループは、そんなに面白くなかったと答える傾向があります。
優しく諭したグループは、やめたくなかったのにやめてしまったという気持ちと行動の不一致を、「ゲームが面白くなかったためだ」と自分に説得して納得するのです。
優しく諭して止めさせれば、いつしか興味を失う傾向があります。
子供がゲームにハマりすぎる時は
たいていの子供は思い切りやらせてあげれば、そのうちゲーム熱が冷めていくものですが、マニアのようにのめり込む場合は本当にゲームが好きなんでしょう。
特に携帯型のゲーム機は、視力への影響が懸念されるので、長時間やらせるのは心配です。
その場合、ゲームに関する記録を書いたり、自分でゲームをつくったりするなど、アウトプットに興味を広げるきっかけを作ってあげるといいと思います。
それだけ熱中できることがあることは、幸せなことだと思います。
勉強をしない場合
勉強をしない場合は見守りましょう。
『「学力」の経済学』で紹介している調査によると、勉強するように言うだけではほとんど効果が無いか、むしろマイナスの場合もあります。
同調査によると、どうしても勉強をさせたいのであれば、親の時間と労力を割かないと効果がないそうです。子供が勉強をする時間を決めてちゃんと守らせたり、勉強を見てあげる、などです。まぁ、言われてみればそうでしょうね……。
ただ、勉強を強制的にさせて、その時のノルマの宿題が終わったとしても、勉強嫌いになってしまうかもしれません。
小学生が学ぶ内容は難しくないので、その気になればすぐに追い付くことができます。
『「生きる力」の強い子を育てる』では、徹底的に遊ばせるサドベリー教育を紹介しています。遊びつくした子供は、中学生、高校生くらいになると、自ら勉強したいと思うようになり、小学校6年間の数学は24時間程度で完璧になり、ひいては高い学力を身につけるようになるとしています。
子供に興味があることや目的があれば、それをきっかけに勉強の楽しさを伝えていくといいです。
野球が好きであれば、打率や勝率の出し方、どうやったらボールが遠くまで飛ぶのか、なぜ金属バッドの方が飛距離が伸びるのか、野球チームの歴史、野球はいつどこで生まれたのかなど、好きなことから学校の勉強につながるようなことに興味を広げるきっかけをつくってあげましょう。
好きなチームが勝ったらスポーツ面をスクラップする、野球解説をするなども、学習で必要になる能力をやしなうことにつながります。
もちろん強制してはいけません。子供が熱心に解説していたら耳を傾けてあげましょう。
小学生高学年や中学生くらいになって、野球選手になりたいといった将来の目標が具体的になれば、この高校に行って甲子園に出られるといいな、それなら勉強しないとな、などと自分から思うようなきっかけをつくってあげられるといいと思います。
やり抜く力が強い子の方が成績が延びる。
実は勉強しない子よりも、熱中することが見つからない子供の方が心配です。
『成功する子 失敗する子 何が「その後の人生」を決めるのか』には、面白い実験が紹介されている。
一回目のIQテストの結果で、IQが高・中・低の3つのグループに分け、再度IQを検査します。再検査では、正解するごとにチョコレートがもらえます。
すると、IQが高・中のグループは、再検査のIQに変化はなかったのに、低グループは、中グループと同じくらいの結果になりました。
では、低グループの本当のIQは中グループ並なのでしょうか?やればできるのでしょうか?
おそらく、やればできるのでしょうが、将来と相関があったのは、チョコレート無しのIQ検査のスコアでした。
IQの数値よりも、「チョコレート無しでは、真剣に答えない」という勤勉性の欠如、モチベーションの低さが、将来の年収や物事の達成に影響します。
なので、勉強する、よい成績をとるよりも大事なのは、「勤勉性」であり、「モチベーション(やる気)」なのです。
それらは、「勉強しなさい!」といっても育ちません。
ゲームを止めても勉強時間は増えない
ゲームを止めさせたいなら「ゲームを止めろ」と言わず、褒めることがよいと書きましたが、そういう関わりは親子の信頼関係を揺るがしかねないですし、思ってもいないことを言わなければいけない親の方もつらいので実際にはおすすめできません。
そもそもゲームをやめたからといって勉強をするわけではありません。『「学力」の経済学』では、1時間テレビやゲームを止めさせても、学習時間は3分も増えないそうです。
それならば、ゲームをやめさせようとするのではなく、適度な時間をゲームに割くように時間を管理させるのが現実的です。
では適度な時間てどのくらいなの?というと、『「学力」の経済学』では、テレビやゲームに1日1時間程度としています。その程度であれば、まったくテレビやゲームをしない子と変わらないとのこと。結構短いのではないでしょうか。
2時間を超えると「子供の発達や学習時間への負の影響が飛躍的に大きくなる」としています。ただ、この調査もどこまで信頼性があるのかな、という気はします。
この調査のとおりであれば、多くの小学生は2時間超、テレビやゲームをしているので、すでに負の影響が出まくっているはずだからです。
それでも2時間を超えないように、と考えるのであれば、テレビ1時間、ゲーム1時間まで、というのが現実的ではないでしょうか。
それでもゲームをやめさせるために親ができること
ゲームをやめさせるためにできることが、もうひとつあります。
友人といるときにゲームを止めさせるには、友人にゲームを止めてもらうしかなく、現実的ではありません。
ですが、家庭にいるときに、ゲーム以上に面白いことがあれば、子供は家庭ではゲームをやらなくなるでしょう。
親が子供の「性格」に与える影響はほとんどありませんが、余暇の過ごし方に影響を与えることは科学的な結果として裏付けられています。
子供が熱中できることを見つけるきっかけをつくったり、一緒に熱中できる取り組みをしたりすることがゲーム離れにつながるかもしれません。
しかも、学校外の活動への取り組みが、やる気や勤勉さなどの資質を育む可能性があります。
習い事でもボランティアでも趣味でも、何かに打ち込み、目標をもってがんばることが、結果的には将来の学力を高めることにつながるかもしれませんし、仮にそうでなくても、充実感や幸福感をもって生活を送ることができます。
学力や偏差値、大学や就職先、給料や社会的立場などを、他人と比べる人生は満ち足りないものです。
読みにくいので手放しでおすすめはできないのですが、ミハイ・チクセントミハイの『フロー体験 喜びの現象学』を読むと、幸せは本人の内面からしか生まれないのだと納得しました。
それまでは、「とはいえ勉強はできてほしい」と思っていたのですが、今では子供が熱中するものに取り組み、いずれは人生の目標を見つけて充実した日々を送ってほしいと思うようになりました。
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