台所育児の決定版!『坂本廣子の台所育児 一歳から包丁を』感想【1歳~6歳】

約30年前に発売された書籍ですが、今なお色あせない名著です。時代が変わっても、「食べる」ことの基本は変わらないのだと再認識しました。

子供と料理をしたい方(というか、私はどの家庭も絶対した方がいいと思うのですが……)は必読です。「自分で生きていく力、家事能力をつける手伝いをする」でも書いたのですが、子どもが社会に出て生きていくうえで、料理はとても大事なものです。

生きていくのに食べることは必須です。食事を作る苦労を知れば、他の人に料理をしてもらった時に自然と感謝の気持ちがわいてきます。

残業や飲み会などで遅くに帰ってきて、用意されている料理を当然のように食べず、パートナーをイライラさせるような大人になってほしくないですよね。

子供の料理デビューについて、著者は、「やりたがったときに、ごまかさずにほんものをあたえる方がいい」といいます。

脳は自分で決めた目的を達成することに喜びを感じるので、タイミングとしてはもちろん「やりたがったとき」がいいのですが、著者曰く、小学生よりも幼児の方が上達の苦労が少ないとのことなので、子供のやりたいサインを見逃さないようにしたいものです。

道具の選び方、特に包丁の選び方は参考になりました。著者はたくさんの包丁を試したそうで、その情報だけで読んでよかったと思ったほどです。

その他、市販のポテトチップスやカップラーメンのように親が食べてほしくないと思う食品との関わり方も参考になります。著者は、「食べたいものは食べてもいいから、いっしょに食べよう」と約束したといいます。確かに、隠れて食べたり、お友達の家で食べまくるようになるよりもずっといいです。

火との関わり方もなるほどと思いました。マッチで小さな痛みを覚えさせることから始めること、マッチをつけるときは一緒にやると約束すること、その代わりやりたいだけやらせてあげることなど。

逆に参考にならなかったというか、我が家では絶対やらないと思ったこともあります。ウソをついてでも食べさせるとか、偏食しないようにケンカをしてでも食べさせるとか、無理やり食べさせるエピソードがいくつか出てきます。

科学的な調査からも無理やり食べさせるより、好きなだけ食べさせる(食べなくてもいい)方が結果的にはよく食べるようになることが分かっています。もちろん、個人差はあります。

著者は子どもに嫌いな大根を食べることを強要し、大人になって大根が好きになったエピソードをあげて慣れさせるのが大事なポイントと言っていますが、強要されることでトラウマになり食べることがより困難になることもあるので要注意です。

私も同じく大根が苦手でしたが、食べることを強要されることもなく、大人になったら好きになったので、そんなものだと思っています。

とはいえ、子供が苦手な食材も食卓には出した方がいいと思います。食べるか食べないかは本人に任せます。食卓が笑顔にあふれていて食べること自体が嫌でなければ、いつか食べる日がくる可能性は高いし、食べられない食材があっても大したことではないと楽観的に考えています。

ちょっと背筋が寒くなったエピソードもあります。食べ物に気を使っている割に子供が小さいと近所の奥様に言われ、著者はショックを受けたそうです。しかし、子供が骨折した時にしっかりした骨だと言われ、見えない骨を育てているのだと確信したそうです。

そこまではいいのですが、その後、著者の子供は、その近所の奥様の子より大きくなったそうで、「いまなら『あら、お宅の方が小さいわネ』っていえるけど、はしたないからいいません」と……。食に関することは色あせていないのですが、エピソードのところどころには昭和の香りがします。

前半は台所育児のやり方や道具の選び方について書かれていて、残り半分はレシピになっています。子供と作て楽しい料理、覚えるべき基本の料理、難易度を分けて掲載されています。

著者の坂本廣子さんは、2018年6月28日に71歳で永眠されましたが、未来の子供たちは、この本を通して食の大切さを学ぶことと思います。素敵な本を世に送り出してくださったことに心よりお礼を申し上げるとともに、ご冥福をお祈りいたします。

タイトル:坂本廣子の台所育児 一歳から包丁を
著者:坂本廣子
発行日:1990年12月15日
対象年齢:1歳~6歳
おすすめ度:★★★★★
面白い度:★★★★☆