赤ちゃんとのコミュニケーションやしつけの注意点

親子がよい関係を構築するのには、ポジティブなコミュニケーションが役立ちます。また、0歳から3歳までは言語の習得においても重要です。

子供は親に注目してほしいと思っているものです。よく言われることですが、親が子供にポジティブに注目していれば、子供がネガティブな形で注目を集めようと思わなくなります。

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人間は社会と関わらないと生きていけない

人間は社会的な生き物であり、他の人と関わりたいという強い欲求があります。ドイツのフリードリッヒ2世は、赤ちゃんの生理的欲求は満たすけれど話しかけないという実験をしました。その結果、赤ちゃんは全員死んでしまったそうです。人間は社会的な動物として集団で生きることを前提に進化してきたので、関係欲求が満たされないと赤ちゃんは育つことができません。

泣いた赤ちゃんに満腹になるまでチューブでミルクを与えるという実験では、お腹がいっぱいになっても泣き止まなかったのに、抱っこするとお腹がすいていても泣き止んだそうです。(『0~3歳の これで安心 子育てハッピーアドバイス』より)

赤ちゃんは空腹よりも接触に対する欲求の方が強いといわれます。私はそのことを知らずに、泣いたらお腹がすいたかオムツかと思っていたのですが、不安で接触を求めていることの方が、むしろ多かったのだろうなと今では思います。

赤ちゃんをよく見て、興味に応じた働きかけをする

乳幼児に対しては、親から積極的に遊びを提案するよりも、興味を持っているものに共感したり、必要とされる時に応じることが大事です。乳幼児は親の相手の他にやるべき遊びがたくさんあります。

特にハイハイを始めた後の赤ちゃんは、この世を探索することに忙しく、親の相手をする時間はあまりないようです。赤ちゃんが興味を持っているものについて話したり、コミュニケーションをとりたいと親を見たり、近寄って着たりしたときに応じることができるように時間があれば近くで見守りましょう。

乳幼児が何かに集中しているとき、それはこの世界を学んでいると同時に、学ぶことを学んでいます。学習の基礎にになる「集中する」という行為を邪魔しないようにしましょう。人は「自分で選んだこと=楽しいと感じること」に取り組むと学習効果が高まります。

(赤ちゃんの遊ばせ方が分からないという方もいるかもしれませんが、赤ちゃんを楽しませようとするよりも、赤ちゃんが自ら楽しんでくれる「環境」を整え、赤ちゃんが必要としたときに応じる方が大事です。詳しくは「好奇心を満たす環境づくり」へ)

言葉の背景にある感情に共感する

赤ちゃんが成長すると社会性が増し、親とのコミュニケーションの頻度も増えていきます。言語でのコミュニケーションが活発になると、情報の伝達が楽になると感じるかもしれませんが、コミュニケーションの基本は「感情」です。子供が何かを言ったときに、どのような感情が背景にあるのか感じ取り、共感するようにしましょう。

例えば保育園に通っている子供が、「お散歩の途中で雨がふってきたよ」と笑顔で言いました。この時、散歩の途中で雨が降ったという事実を伝えたいのではなく、その雨がとても楽しい出来事だったことを伝えたいのです。「雨が降ってきたんだね!楽しい散歩だったね。雨が降ってきてどうしたの?」などと感情を受け止めて表現してあげれば、子供は言いたいことがちゃんと伝わったと安心します。

そのためには、どのような表情で、どのような声の調子で話しているのか子供をよく見ることが大事です。言葉を話せるようになっても、赤ちゃんの時と同様に、よく見ることの重要性は変わりません。

親が共感を示すことで、特に乳幼児は感情を覚えたり自覚することができます。これが、イライラするということなのか、とか、自分は寂しいのか、とか。感情に名前がつくと、子供も感情を伝えたり、コントロールしやすくなります。

子供が受け入れがたい言動をしても、その背景にある感情は理解できる場合が多いと思います。仮に親に理解できなくても、子供が感じることを否定はできません。そんなときは、受容の姿勢で向き合いましょう。受容とは肯定も否定もしない、ありようをそのまま受け止めることです。

一方で、親も自分の感情を否定する必要はありません。そういうことを言われると嫌だ、などと自分の感情を言ってもいいのです。

お互いに正直に接することで、親子のよい関係が築かれます。

何かを伝えるときは、具体的かつポジティブに

子供は察するとか、行間を読むというのが難しいので、何かを伝えたい時はなるべく具体的に言葉にしましょう。「もうすぐ出かけるよ」と言っても着替えないのであれば、「着替えて欲しい」と言うなど。

そして、できれば、なるべくポジティブな言い方をしましょう。「ドアを開けっぱなしにしないで」より「ドアをしめてほしいな」とか。「お母さんは入院するから、明日から1週間会えないよ」というより、「お母さんは明日から病院に泊まるけど、1週間後には帰ってくるからね」など。

否定的に考えると、思考力や記憶力は落ちるといわれています。

2歳くらいになると友達とのやり取りも楽しむようになりますが、本格的に友達と遊ぶようになるのは3歳頃です。子供の社会が広がると、親とのコミュニケーションの時間は減っていきます。

言語も社会性も親の与える影響はだんだんと小さくなっていきます。一方で、社会の波にもまれながら成長する子供を信じ、見守ることの重要性が高まります。誰がなんと言おいうと親は自分を理解し、信じ、味方になってくれるという確信があれば、何かの時に相談してくれる関係になれるかもしれません。

心地よいスキンシップを心がける

スキンシップは大人にもよい影響があると言われるので、成長に応じて変化させながら何らかの形で続けたいものです。

生後半年間は、カンガルーケアがよいという研究結果があります(詳細は「カンガルーケアは赤ちゃんの知育になるだけでなく、お母さんもハッピーな気持ちになる」へ)。また、おんぶより抱っこがいいようです。マッサージ、ふれあい遊び、くすぐり(反射的に笑っても嫌がっている場合もあるので注意する)、抱きしめる、手を握る、ハイタッチなど、各家庭や子供にあったスキンシップを日常的にするといいとよいでしょう。

日本はあまりスキンシップをしないので、毎日のルーティンに組み込むと定着するのではないかと思います。例えば、朝起きた時や寝る時になんらかのスキンシップをするなど。家庭で日常的に行われていれば、子供は家ではそれが当たり前と思うものです。

時に毅然とした態度でダメなことを教える

社会のルールを教えることも大切です。時には毅然と、ダメなことはダメだと伝える必要があります。1歳の赤ちゃんにダメだと伝える方法は、「1歳5ヵ月~1歳8か月の赤ちゃんはかんしゃくやイヤイヤのピーク!魔の2歳児にならない対処法」もご参照ください。

一番大切なのは、親自身の感情を大事にすること

世の中には、母親は聖人君子でないといけないと思っているような人がいて、「母親のくせに…」とか、「母親がそんなだから子供が…」とか、訳の分からないことを言ってきたりします。

子供には常に愛情深く接しないといけないとか、イライラする自分が悪いのだとか、追い込まれる方もいます。いや、そんなことないですよ、と声を大にして言いたいです。

子供の感情を尊重するのと同じく、自分の感情も大事にすべきです。そして、建設的なコミュニケーションを通して親子のよい関係を築くことが重要です。

親の我慢の上に、表面上のよい関係ができあがっても意味がありません。子供が思春期になったら、親が何を考えているか分からないため反抗したり、会話がなくなることもあるでしょう。親は我慢することが常態化し、家庭に息苦しさを感じるかもしれません。

よい関係は、心を開くことから始まります。実際よりもよい母親を演じようとか、イライラしているのに、それを隠して笑顔で接するよりも、素直な感情を伝えた方が、よっぽど親子の絆が深まります。

大人だって、何を考えているか分からない人とか、いい人ぶってるような人って、あまり関わりたくないと思いませんか?

ありのままがいいのです!